Page 1 164-衆-予算委員会第七分科会-2号 平成18年03月01日 ○前田分科員 民主党の前田雄吉です。  二階大臣におかれましては、中国からお帰りでお疲れのところ、恐縮でございますけれども、三十分いただきまし て、御質問させていただきます。  私も、中国から先週末行ってまいりまして帰ってきて、唐山の人民政府のお招きで、投資環境視察団の団長で行か せていただきました。二階大臣もお気づきでしょうけれども、中国の経済成長はもう本当に目まぐるしいものがあり ますね。  そこで、きょうは、我が国におけるネットワークビジネスについて御質問申し上げます。  中国は、WTOに加盟いたしまして世界標準のビジネスモデルを求める、その中にネットワークビジネスの導入と いうのがありまして、昨年末に法整備もきちんとされておられました。中国ですらと言ったら言い方が申しわけない ですけれども、それに比べて我が国は、このネットワークビジネスに対して、無知、無理解、誤解、偏見、勘違いと いうものにさいなまれまして、その中で我が国における立法政策がなされてきたというふうに私は思っております。  アメリカにおきましては、フランチャイズと並んで、ネットワークビジネスは二大ビジネスの一つであります。全 米の商工会議所の会頭がアムウェイの会長でありますし、そうしたことでもわかりますように、しっかりと社会的に も認知されているわけであります。  我が国では、それに比べて、本当に偏見、誤解。と申しますのも、我が国に入りましたときに、いわゆるマネーゲ ームに使われてしまった、残念な悲しい過去の歴史があります。ですから、今もその誤解、偏見が続いておりまし て、私はこれを払拭しなきゃいけない。もちろん、違法なものは厳格に取り締まって、育成すべきものはきちんと育 成していくというのが我が国の産業政策で大事ではないかというふうに思っております。  そこで、毎年、一昨年も昨年も同じ質問をさせていただきました。経済産業省におかれましては、このネットワー クビジネスは、何万人の方が従事されて何兆円の産業であるとお考えでしょうか。御質問申し上げます。 ○迎政府参考人 お答え申し上げます。  御指摘のネットワークビジネスというのは、特定商取引法における連鎖販売取引というふうに定義されている取引 の形態と思います。この点の連鎖販売取引のみのデータというのは私どもで保有はしておりません。  一つには、訪問販売協会世界連盟が、アメリカでダイレクトセリングと言われるふうな取引形態、これは訪問販売 と連鎖販売取引の数字を合計したものに相当するというふうに思っておりますけれども、日本については、この数字 は、二〇〇三年のデータとして、約三兆円、携わっている販売員の人は二百万人であるというふうな数字を発表して おります。  私ども、連鎖販売取引のみを区別して集計した統計データを持っておらないので、現時点ではちょっと御紹介でき ませんが、私どもとしても、現状把握のための調査というのを今実施しておるところでございまして、こういうふう なものがまとまりましたら、そういうふうなある程度のものがわかるのかというふうに考えておるところでございま す。 ○前田分科員 昨年も同じ数字を出されましたね。経済産業省、やはり私はしっかりとお調べいただきたいと思いま す。現状をまず把握することなしに何の立法政策もできないわけでありますので、きちんとまず現状把握、また来年 も私は同じ質問をこの時期にさせていただきますので、きちんと調査して調べていただきたい。  去年と今お出しになった数字は、私が申し上げたWDSA、世界直販協会、ダイレクト・セリング・アソシエーシ ョンの推計値であります。それから、後の三兆円というのは訪販協の出されています数字であります。大体その半分 がこのネットワークビジネスではないかというふうに言われておりますけれども、私どもは、この産業は六兆円の八 百万人が従事する産業であると考えております。  それぐらいに成長している産業でありますので、これはきちんと経済産業省におきましても把握していただいて、 先ほど、調査というふうに言われました。この調査、私は数週間前にホームページで見つけましたけれども、四百万 円の予算で、数週間前に出されたその調査のことですね。ちょっと確かめたいです。 ○迎政府参考人 調査につきましては、ちょっと予算額は存じませんけれども、公募をいたしまして、委託先とし て、帝国データバンクに委託をいたしまして、既存のデータ等の収集、補完、あるいはその分析、推計に基づいて、 市場規模、従業員数等のマクロデータをまとめ、推計をするというふうな内容のものを今実施しておるところでござ います。 ○前田分科員 私がまた同じ質問をするからといって慌ててこんなことをやられるんじゃなくて、本当に、宣言しま すけれども、また来年同じ質問しますからね、きちんとお答えください。  それから、お願いしておきたいんですけれども、そうした調査をせっかく税金を投入してされるわけですので、結 果についてはきちんとすべて開示していただきたいと思いますが、いかがですか。 ○迎政府参考人 調査の内容につきましては、個別企業のヒアリングの結果とかも含みますので、どういった形で公 表するかというのは、得られた結果を見ながら検討してまいりたい、こういうふうに思っております。  以上でございます。 ○前田分科員 もちろん個人情報を出せというわけではありませんので、それ以外の全体的な数字がつかめるもの、 このネットワークビジネスにかかわる数字がつかめるものについてはきちんと開示していただきたいと思います。こ れはどうですか。 ○迎政府参考人 先ほど申し上げましたように、公表して差し支えないというものはぜひ公表をするという方向で考 えたいと思っております。  以上でございます。 ○前田分科員 そうですね。ぜひこの点、まず、基礎的な数字がなければ何も議論できないわけですから、何年も何 年もほったらかしであってはいけないと思います。きちんとやってください。  では、私は、このネットワークビジネス、先ほど申しましたように、非常に、我が国に入ってきて以来、誤解、偏 見等が渦巻く中に置かれております。一部の、ごく本当にわずかな悪質な人のために、まじめにこの業で汗を流して おられる方、あるいは納税の義務をきちんと果たしておられる方が迷惑しております。ですから、違法な人は、違法 な企業は厳格に取り締まる。これは、私は基本になければいけないと思うんです。でないと、まじめにこの業にいそ しまれる方が迷惑をする。  そこで、私は、警察庁に伺いますけれども、昨年、どのぐらい取り締まられたのか、何人取り締まり、何件あっ Page 2 て、何億円その数字が挙がったのか、お聞きしたいと思います。 ○巽政府参考人 お答えいたします。  マルチ商法に係ります事件の昨年の検挙状況といたしましては、特定商取引法違反で一事件五人を検挙したところ であります。これは静岡県警察が検挙したものでありますけれども、健康食品等の販売会社が、健康食品等の連鎖販 売取引についての契約を締結した後に、その相手方に契約内容を明らかにする書面を交付しなかったというものであ りまして、同社は約六百人の会員に対し総額約三億六千万円分の商品を販売していた事件でございました。 ○前田分科員 それで、この取り締まり実績として何億円挙がったわけですか、お聞きします、再び。 ○巽政府参考人 ただいま申し上げましたように、六百人の会員に対しまして総額で約三億六千万円分の商品を販売 していたということでございます。 ○前田分科員 確認申し上げました。  ですから、先ほど私は、この業態というのは六兆円で八百万人の産業だというふうに申し上げました。これは別に 根拠がないわけではないんです。その中で、今警察が取り締まられたのはそれだけであると、ごくわずかであります ので。確かに、私は、警察としては取り締まりにくい業態だとは思います。それはどうしてかというと、やはり定義 に困る。  今までの我が国におけるネットワークビジネスを取り巻く法改正は、この定義の改正の歴史でありました。つま り、このネットワークビジネスとはどういったものであるかという定義の改正をずっとしてきたわけであります。特 に平成十二年で特定負担の概念を取り払って、すべて一つの定義に入れてしまいました。つまり一本化したわけであ りますけれども、そのために、規制すべきビジネス形態と育成すべきビジネス形態をどう峻別するべきかということ があいまいになってしまったわけであります。この区別を経済産業省においては今後政策にどのように生かされるの かを御質問申し上げたいと思います。 ○迎政府参考人 連鎖販売取引の定義の改正というのは、御指摘のように、平成十二年に法律の改正を行いまして特 定負担の下限を廃止したわけでございます。これは、契約上の負担額を従来の二万円というふうなものが決まってい たものを二万円未満にしながら規制逃れをして高額負担を負わせるようなものが、いわゆる脱法が出てきたというふ うなことで定義を改正したわけでございます。  ただ、そもそも、連鎖販売取引の法律の対象になったから、これがいいとか悪いとか、こういうふうなことではな いというふうに私ども考えておりまして、定義に当たっても、これは、販売組織や個人販売員の活動が、法律に従っ て適正に行われていれば、必ずしも問題が生ずるわけではないわけでございます。  したがいまして、私どもとしては、現実に、そうはいいましても、トラブルを起こしている事業者もいるというふ うなことで、法に違反する悪質事業者を排除する、それで連鎖販売取引の公正確保を図っていくというふうなことが 重要であると思っておりまして、警察の取り締まりのほかに、私どもも行政権限として今年度には既に二件について 業務停止命令を行い、十件については改善の指示を行っているところでありまして、引き続き法に違反する悪質事業 者の排除には力を入れていきたい、こういうふうに考えております。 ○前田分科員 やはり、まず、定義いかんによっては悪質な事業者とみなすべき業態も大きく変わってくるわけであ りますので、きちんともう一度この定義を見直していただいて、悪質なものは取り締まる、そうでないものはきちん と評価して育てるというのは、私は産業政策の基本であると思っております。  さらにまた加えますと、連鎖販売ということで規制をかけると、問題のある悪質なマルチ商法も健全なネットワー クビジネスも同じように規制されてしまう。また逆に、育成しようとする場合も、健全なネットワークビジネスも悪 質なマルチ商法もこれまた育成されてしまうという非常に自己矛盾を来すようなことに陥ってしまいますので、私は 定義の問題は軽視しちゃいけないと思います。ですから、きちんともう一回この定義も省内でまたお考えいただい て、この定義の仕方でいかようにも、健全なものであるか、あるいは悪質なものであるかという区別がされるわけで ありますので、この点をきちんとこれからの行政に生かしていただきたい。これについてまたどう思われますか、再 び。 ○迎政府参考人 定義ということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、実態として特定負担という ものを決めるというふうなことが脱法行為を生んだというふうな事実がございます。  それで、連鎖販売取引というのは、個人を販売員として勧誘をいたしまして、さらにその勧誘された販売員が他の 人々を次々に勧誘をして、多段階に組織を拡大するものでございます。上位に上がった会員ほど利益がふえる仕組み というふうなことでございますので、この点において、虚偽説明とか無理な販売勧誘とか、あるいは下位の販売員の 過剰在庫といったようなトラブルを発生する誘因を持った取引であることは事実でございます。  したがって、今申し上げましたような虚偽の説明とかそういったことがないように、法律をしっかり守って、その 定義には当たっても、適正に事業をやっていただければこれはトラブル等も生じないわけでございますので、そこの ところは、きちっと法律の義務を果たしていただくというふうなことであろうと思っております。 ○前田分科員 まさしく本当にそのとおりで、きちんと遵法の精神でやっていただきたいというのは当たり前の話で す。  私は、昨年、国民消費生活センター、これの苦情件数のカウントの仕方についてお尋ね申し上げました。そのとき に、クーリングオフはどのようにしたらいいですかという問い合わせが、これは苦情か問い合わせか、苦情にカウン トされるというのを聞きまして驚いたわけですけれども、こうした苦情件数のカウントのあり方が、その後どのよう に改正されたのか、一回伺いたいと思います。 ○田口政府参考人 お答え申し上げます。  国民生活センターや各地の消費生活センターに寄せられます消費生活相談でございますが、その内容に応じまし て、苦情、問い合わせ、要望と三つに大別されますが、国民生活センターにおいて運営しておりますPIO―NET システムでございますが、このシステムにおきましては苦情を集計対象とするという扱いになってございます。この PIO―NETシステムに一般的な問い合わせのようなものが入ってくることのないように、昨年四月、国民生活セ ンターから全国の消費生活センターに対しまして通知を行いまして、趣旨の徹底を図っているところでございます。 ○前田分科員 そのように、単なる問い合わせが苦情にならないように、そうすると、また基礎的な数字が誤るわけ ですので、きちんと集計していただきたい。相談件数二万件ということですので、これもどのような内容になってい るのか、この根拠にもかかわる重要な問題ですので、基準の方、きちんとしていただきたいと思います。 Page 3  それから、同じく経済産業省についてお尋ねしますけれども、これは、ネットワークビジネスを取り巻く法制度の 問題ですけれども、このネットワークビジネスに加入する入り口のみの規制であると私は思うんですね。さらにま た、正確に言うならば、クーリングオフの制度がありますので、出口についてもちゃんと規制もある。入り口と出口 だけで、その間の、このビジネスを健全にどう育成、発展させるのかということが我が国の法制度の中には欠落して いると私は思うんですね。  韓国のように、年間で幾ら以上の負担を強制してはいけないとか、あるいはコミッションがどうだとか、そういう ふうに明記してある法体系ではなくて、ネットワークビジネスを取り巻く日本の法制度は、出口と入り口だけで、中 間の、実際にその業にいそしむ方のための法律が欠落していると思いますが、この点についていかがお考えでしょう か。 ○西野副大臣 先ほども少し御質問で、答えも一部は出ているかと思いますが、いわゆる連鎖販売取引法の問題だと 思います。  これはもう、迎審議官が説明をいたしましたとおり、組織がとにかくでかくなればそれだけ、端的に言ったら、会 員は収入が多い、利益がふえる、こういう仕組みでございますし、ですから、その間には虚偽の説明等があったり、 大阪弁で恐縮でございますが、これやったらもうかりまっせ、こういう短絡的な、いわゆる虚偽説明あるいは誇大広 告、こういうものが途中であった場合、あるいは書面で十二分な説明がしてなかった場合、そういう場合は、これは ルールには違反するわけでございます。  このあたりの問題は、ずっと以前からそのまま法改正なしに来ておりますが、一昨年、十六年にこの法の改正があ りまして、今度は、お示しの退会、出口のときの適正な条件をつけたわけであります。それは、退会のときには、い わば、たまったといいますか預かったといいますか、返品のできないものが多く集まってしまっている、本人に負担 がかかってしまっている、こういう場合は、十二分にそれを、取り消しのルールができるような制度にしたとか、退 会における未使用品のルールが一部改正をされたわけであります。  したがいまして、今後、これらの連鎖販売取引等によってはトラブルが比較的起こりやすい状況にあるというふう に私は思っておりますので、現体制の中で、法をしっかりと運営、執行していくように尽くしていくべきだというふ うに思っております。 ○前田分科員 もう本当に、それは副大臣が言われるとおり、法を破る方に対しては、やはり厳格に取り締まるとい うのが基本です。遵法精神が十分な方、法を守る方については、私は、保護、育成する、その形が必要であると思い ます。保護、育成すべき基本法がこの業態には必要であるというふうに私は思っております。  そこで、もう一点。ネットワークビジネスの会社は社会的な差別や偏見にさいなまれています。例えば、公的施設 が、セミナールームが借りられないとか。また、特に金融庁にお尋ねしますけれども、これはあくまでもうわさであ りますけれども、金融庁において、ネットワークビジネス業界への融資はするなという口頭の指導があるやに伺って おりますけれども、これは事実でしょうか。 ○山崎政府参考人 お答え申し上げます。  一般に、金融機関の融資は適切なリスク管理のもと各金融機関の経営判断に基づいて行われるものでございます。 金融庁におきまして、適法に行われる特定のビジネスに関しまして融資をしてはいけないという指導を行っていると いうことはございません。 ○前田分科員 今、ネットワークビジネスについて、口頭でそんなものはない、金融庁はそんなものは指導していな いという言質をきちんと得させていただきました。ありがとうございます。  今、ネットワークビジネスの話をずっとしてきましたけれども、やはり、世界で認知されている二大ビジネスであ ります。フランチャイズと並ぶこのネットワークビジネス、きちんと、私は、法を破る者については厳格に取り締ま る、この態度が必要だと思います。  一方、遵法、そして納税の義務をきちんと果たされる皆さんについては、保護、育成すべき基本法が必ず必要であ ると思っておりますので、今度、きちんと今の現状調査をされた上で、私は答えを出していただきたいと思っており ます。  最後になりましたけれども、冠婚葬祭互助会、これについて一問だけ質問させていただきます。  若い男女が三千円の積立金を出して、これは若い人たちの夢です、前受け金という形で三千円ずつ積み立てて、互 助会に預ける。その前受け金をもとに、結婚のときに安く結婚式を上げられるとか、そういう前受け金の制度があり ます。それが二兆円全国であると言われていますけれども、この不況の中でこの前受け金が食いつぶされる。  互助会の業界に聞きますと、お互いにつぶれないように、互助の精神に基づいてやっているからと言われますけれ ども、やはり私は、もしものことがあったら、若い男女の、若い皆さんの夢が消えるわけでありますので、そんなこ とがあっちゃいけない。ですから、経済産業省として、どのようにこの前受け金の確保についてやられているのか、 お答えいただきたいと思います。